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刑事弁護人の役割

1. 最近,ネット上のニュースやそれに対する一般の方のコメントを見ていますと,刑事事件を担当する弁護士に対する厳しいコメントを目の当たりにします。
 今回は,刑事事件における弁護士(正確には「弁護人」といいます)がなぜ必要なのかについて,お話しします。

 

2. ある日,何かしらの事件が起き,誰かが犯人と疑われ逮捕されます。事件は突然起きるものですし,逮捕も突然されるものです。しかし,その人は実際には悪いことはしていません。このような場合は多々あります。
 近年,裁判員裁判が始まり,皆さんは,「疑わしきは被告人の利益に」という考え方を聞いたことがあるかもしれません。この考え方は,その人が犯人であるか疑いが残るのであれば,刑罰を科すことはできないというものです。
 やっているか分からない人に刑罰を科すことは,絶対にあってはならないことです。これは,暴走した国家権力が市民を弾圧するために刑事事件を利用して人権侵害を行ってきた,という歴史的反省をふまえて認められたものです。

 

3. では,逮捕された人が犯人であるか疑いが残っているかをどのように選別するのでしょうか。
 まず,自分はやっていないという本人の言い分をきちんと伝える必要があります。また,その事件に関して,捜査機関が集めてくる証拠に間違いがないかをきちんと検討する必要があります。
 しかし,一般の方がある日突然,逮捕された場合に,自分の言い分をきちんと伝えたり,証拠を正しく検討したりできるでしょうか。逮捕された人は取り調べを受けますが,相手はプロの捜査機関です。多くの人にとって初めての経験ですし,自分の言い分を正しく伝えるのは思いの外大変です。また,証拠には専門的なものもあり,慣れていない一般の方がその内容をきちんと理解し,適切に反論するのも大変です。
 そのような一般の方をサポートするために,弁護人が必要なのです。

 

4. 刑事事件で弁護人に依頼する権利は,日本国憲法においても定められています。
 憲法34条前段は「何人も,理由を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ,拘留又は拘禁されない」と,憲法37条3項前段は「刑事被告人は,いかなる場合にも,資格を有する弁護人を依頼することができる」と定めています。
 なぜ日本国憲法がこのような権利を認めているのでしょうか。それは,これまで,刑事事件では多くの冤罪(無実なのに処罰を受けること)を生んできた歴史,また暴走した権力が市民を弾圧するために刑事事件を利用してきた歴史があるからです。
 今日でも,多くの冤罪事件が存在するのは,色々な報道で伝えられている通りです。冤罪をはじめとする悲惨な歴史を繰り返さないために,日本国憲法は弁護人制度を用意したのです。
 なお,このような弁護人制度は日本だけではなく世界各国で採用されています。また,資力が十分でない方については,国選弁護制度も用意されています。

 

5. 福岡県弁護士会は,身体拘束された方の弁護人に依頼する権利を確保するため,弁護士が無料で出動する当番弁護士制度を用意しています。また,全国の弁護士会は,国選弁護制度に対応できるよう体制を整えています。
 それだけ,弁護士会にとって,刑事事件における弁護人としての活動は重要なものですし,弁護士が弁護士たる本質的な使命であると考えています。

 

6. 痴漢冤罪の事件など,普通に社会生活を送っている一般の方が,ある日突然,犯罪者と疑われてしまうケースは誰しも例外ではありません。
 疑われた時に,犯人と間違われないために,きちんと主張し,証拠を検討する。そして,専門的知識・経験の乏しい一般の方を弁護人がサポートする。それが,刑事事件において弁護人が必要な理由です。
 色々な事件が起き,その度に弁護人が批判されるかもしれませんが,弁護人の必要性について市民の皆さんにご理解いただけるように,弁護士会としても広報を続けていきます。

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