弁護士コラム

非暴力平和隊

みなさんは、「非暴力平和隊」(Nonviolent Peaceforce)の活動をご存じでしょうか。戦争や暴力に病んだ世界を変えたいと考える世界各地のNGO(非政府組織)が協力し、2002年に創設した国際的なNGOネットワークです。
人権侵害と紛争の拡大防止を目指し、世界の紛争地に「ピースチーム」という担当者チームを派遣し、暴力の脅威にさらされる市民を護衛する活動を行っています。現在は日本のNGOを含め、世界から60を超える団体、100以上の支援団体が加入しています。
例えば、スリランカでは、選挙監視、難民・少年兵の保護、異民族間の話し合い促進などに取り組み、日本のNGOからもこれまでに2名が派遣されています。また、グァテマラの国政選挙において人権活動家への脅迫が激しいため、護衛的同行のための派遣を行いました。

非暴力平和隊の特徴には、武器を持たないで紛争に介入するため、紛争に巻き込まれにくく、軍事的介入に比べ犠牲者が極めて少ないことがあります。ピースチームの派遣は、紛争当事者に対して国際社会が注視しているというメッセージを送る効果があるため、危害を加えられにくいのです。また、武器を持たない非政府組織のため、派遣要請を行う現地からは、過度の介入に発展するおそれもなく、受け入れられやすいという特徴も持っています。

武器の使用を前提としない非暴力平和隊の活動姿勢は、戦力の不保持を誓う日本国憲法の平和主義の考え方と共通する面を持ちます。
他方で、平和主義は、武器を持たないなどいわゆる「しない平和主義」として捉えられがちですが、近時は、平和主義の思想を押し進め、非暴力平和隊のような平和を維持構築する活動を、市民一人一人に求める、「する平和主義」として解釈する研究も行われています。

平成24年8月、北九州部会の憲法委員会では、「する平和主義」の提唱者で、「非暴力平和隊・日本」の設立に関わった君島東彦先生(立命館大学国際関係学部教授)を講師にお招きし、「『しない平和主義』から『する平和主義』へ」とのテーマで市民講座を開催しました。講座後のアンケートでは、「非暴力平和隊の活動をはじめとする『する平和主義』に共感を持った」などのご感想が多く寄せられました。憲法委員会では、このような憲法的テーマで市民講座を年間1,2回開催しています。

また、平成24年度以降、憲法委員会では、「弁護士が法律家として国際的な紛争解決のためにどのような役割を担うべきか」を重点的なテーマに、10回を超える勉強会を持ち、その成果を冊子にまとめています。
憲法委員会では、市民講座の開催を含め、憲法的な視点に基づく企画の実施や、提言、報告などを、今後も行う予定です。