弁護士コラム

さくらサイトにご注意!

「さくらサイト」という消費者を狙った被害が近年多発しています。

「さくら」とは本来、購買意欲を促すために客のふりをして品物を褒めたりする人を指しますが、ここでご紹介する「さくら」は、出会い系サイトの利用者を増やすために活動する人です。以下に「さくらサイト」による被害事例をご紹介します。

被害事例その1

この「さくら」は、芸能人や有名人のマネージャーを名乗り、「お礼を○○万円するから、芸能人○○の相談相手になって欲しい。」と被害者に電子メールを送信してきました(最近では、電子メールではなく、mixiやfacebookなどを利用して勧誘してくる場合もあるようです)。そして、「さくら」は、通常の電子メールと異なり、メールを送受信するだけで1通あたり300~500円もの手数料が発生するサイトに被害者を誘導し、巧みな話術で被害者に多数回のメール送受信を行わせ、手数料の名目で被害者に500万円以上の損害を負わせました。

被害事例その2

この「さくら」は、あるサイトを通じて被害者に「女性恐怖症を治したいので協力して欲しい。お礼を数百万円払うから。」との内容のメールを送ってきました。このサイトでのメール送受信は無料でしたが、「さくら」は被害者に「通常の電子メールのアドレスを交換したいので、サイト上で手続を行って欲しい。」と要求してきました。そのサイトでは、通常の電子メールのアドレス交換手続を行う場合にはサイト業者に5万円以上の手数料を支払う必要がありましたが、「さくら」は「アドレスの交換が無事に出来たら、手続費用は自分が負担するから。」と被害者を誘導します。しかし、そのサイトでの手続は必ず失敗するように仕組まれていて、理不尽な理由(例えば、「タイトルに『』を付けなかったから」「会員番号の数字の『1』がアルファベットの『I』になっていた」など)で失敗し続けるのです。そして、手続に失敗する毎に手数料が増えていきます。被害者は2回目くらいの失敗で手続を止めようとするのですが、「さくら」は言葉巧みに被害者に手続を続けさせ、被害者に100万円を超える損害を与えました。

いずれのケースでも、サイト運営業者は責任を全く認めず、前者のケースでは、弁護士からの通知書も一切受け取りませんでした。やむを得ず、振り込め詐欺救済法に基づく振込先口座の凍結を行いましたが、前者のケースでは4万円程度の配当金しか回収できませんでしたし、後者のケースでは配当手続すら行われませんでした(振り込め詐欺救済法による口座凍結は、弁護士からのFAXという簡易な手続で可能ですが、簡易な半面、口座名義人による凍結解除も容易なのです)。

「さくらサイト」の運営業者に対しては、特定商品取引法などの法律による規制(取り締まり)があります。しかし、これらの法律には、業務停止命令などの罰則はありますが、残念ながら、業者から被害者に被害金を返還させる規定は用意されていません。
そこで、もし多額のお金を支払ってしまった後で「さくらサイト」であると気が付いた場合には、サイト運営業者との直接交渉に備えて、できるかぎり証拠を保存(例えば、メールの保存、サイト表示画面の写真撮影、代金支払・振込明細書の保管など)しておく必要があります。メールの内容やサイト画面の表示、お金の流れから、詐欺や暴利行為を主張して損害賠償請求が認められる可能性もあります。
また、サイト運営業者への支払に電子マネーやクレジットカードを利用している場合には、電子マネーやクレジットカードの発行業者、決済代行業者も巻き込んで交渉を行うことが重要です。カード発行会社などは、昨今の「さくらサイト被害」の状況を踏まえ、請求を一定期間留保してくれる会社もあるようです。その間に、サイト運営業者らとの交渉を行うことができます。

先の被害事例のように、業者の振込先口座を凍結して使えなくさせるという方法もありますが、凍結された口座から配当金が得られるかは不明ですし、最近は業者も逃げ足が早く、口座にお金を残していない場合もあります。口座凍結前の業者との交渉により被害金の何割かでも返金される場合もありますので、被害に気が付かれた場合には、お早めに弁護士にご相談ください。そして、何よりも、このような被害事例の存在を念頭に置かれて、怪しいサイトは絶対に利用しないようにお気を付けください。