弁護士コラム

家族法改正②(親子交流、財産分与)

 家族法改正①のコラムでは、養育費の履行確保のための改正内容についてご紹介しました。今回の改正では、その他にも、「親子交流(面会交流)」「財産分与」など、離婚後の子の養育に関わる重要な事項について、子の利益を確保するための見直しが行われています。
 先日(2025年10月)、改正民法を2026年4月1日から施行する旨の政令が閣議決定されました。本コラムでは、養育費の履行確保以外の改正内容のうち、特に重要な「親子交流」と「財産分与」に関する改正についてご紹介します。

1 親子交流に関する規定が見直されました

⑴ 婚姻中別居時の親子交流に関する規定が明確化されました

 これまで、離婚後の「親子交流(面会交流)」については民法に定めがありましたが、婚姻中別居している間の親子交流については明文の規定がありませんでした。
 今回の法改正では、婚姻中に父母が別居した場合にも「子の利益」のために親子交流について必要な事項を父母が協議で定める必要があることが明確に規定されました(改正後民法817条の13)。

⑵ 父母以外の親族との交流について定められるようになりました

 離婚後、祖父母など、父母以外の親族と交流を持つことが、子の健全な発達にとって重要であると考えられるケースがあります。
 今回の改正では、子の利益のため特に必要があると認められるときは、家庭裁判所が父母以外の親族と子との交流の実施を定めることができるようになりました(改正後民法766条の2)。
 これは、父母が原則として子の交流の決定権を持つことを前提としつつも、子の利益を優先するために、父母以外の親族との交流についても裁判所が関与できる道を開いたものです。しかし、当該規定は、子の健全な発達にとって祖父母との交流が不可欠であるような限定的な場合のみに認められると解されます。

⑶ 条文(改正後民法817条の13)のご紹介(婚姻中別居時の親子交流)

 条文では、離婚等以外の理由で子と別居する場合においても「子と別居する父又は母その他親族と当該子との交流」に関する必要な事項については「子の利益を最も優先」して「父母の協議」で定めるものとされ、その協議が調わないときは「父または母の請求」によって家庭裁判所が定めると規定されています。
 この条文は、すでに最高裁判所の判例により確立された実務運用を、法律の条文として明確に規定したものと評価されています。
 これにより、婚姻中別居時の親子交流に関する法的な根拠が明確になり、子の養育に関する父母の責務がより明らかになりました。

2 財産分与に関する規定が見直されました

⑴ 財産分与の請求期間が延長されました

 財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚の際に分け合う制度です。これまで、財産分与の請求は離婚から2年以内に行う必要があるとされていました(民法768条2項)。
 今回の改正により、この請求期間が離婚後5年間に延長されました(改正後民法768条2項)。この延長により、離婚後の生活基盤の確立や、財産調査に時間を要する場合などに、請求者がより余裕をもって手続を進めることができるようになります。
 なお、離婚が改正法の施行前の場合には、当事者間で協議が調わないときの家庭裁判所での財産分与請求手続については「なお従前の例による」として離婚後2年以内に制限されています(同法附則4条)ので、ご注意ください。
 また、同じく離婚に伴う重要な手続きである「年金分割の請求期間」は、改正後も2年のまま変わっていません(厚生年金保険法78条の2)ので、こちらもご注意ください。

⑵ 財産分与において考慮すべき要素が明確化されました

 改正法では、財産分与の目的や、分与の額及び方法を定める際に裁判所が考慮すべき要素が明確化されました。具体的には、「婚姻中に取得し、または維持した財産の額」や「財産の取得または維持に対する各当事者の寄与の程度」などが考慮すべき要素として定められました(改正後民法768条3項)。
 特に、財産の形成・維持における夫婦の貢献度は原則2分の1ずつであるという裁判実務の考え方も踏まえつつ、考慮要素を明確にすることで、公平な財産分与の実現を目指しています。

⑶ 財産情報の開示命令制度が新設されました

 財産分与の協議や調停・審判を行うにあたっては、分与の対象となる夫婦の財産の全体像を正確に把握することが不可欠です。しかし、相手方の協力が得られない場合、財産情報を知ることが困難なことが多々ありました。
 そこで、改正法では、財産分与に関する裁判手続において、家庭裁判所が当事者に対して分与の対象となる財産の状況に関する情報の開示を命じることができる制度が新設されました(改正後人事訴訟法34条の3、改正家事事件手続法152条の2)。
 この制度により、財産分与に関する手続の利便性が向上し、実効性の確保が図られます。

3 おわりに

 今回の家族法改正は、子の利益を最優先するという考え方を基礎に、離婚後の子の養育に関する様々なルールを見直すものです。これにより、離婚時の紛争解決や、離婚後の生活の安定に繋がることが期待されます。
 しかし、新しい制度を適切に利用するには、専門的な知識や手続の理解が必要です。特に、共同親権の選択や親子交流の具体的な決め方、財産分与の対象財産の特定など、専門家のサポートが必要となるケースも多いと思われます。
 今回の改正でどのような影響があるのか、ご自身が抱える問題についてどのように進めたら良いのか、お悩みでお困りの方は、お一人で悩まれずに、法律相談センターにてご相談ください。