弁護士コラム

相続法改正①(自筆証書遺言の方式緩和)

1.自筆証書遺言の方式が変わりました。

遺言書は、亡くなられた方の「遺産の分配方法等に関する最終意思」を明らかにするものであり、残された方たちの「遺産をめぐる紛争」を防止する効果が期待できるものです。

(1) 公正証書遺言

遺言書の中でも「公正証書遺言」は、公証役場で公証人が作成してくれるものですので、手続的な間違いがほぼありません。しかし、残す財産の価値等により、ある程度の作成手数料(公証人費用)が発生します。

(2) 自筆証書遺言

一方で「自筆証書遺言」は、遺言者が自筆で書くだけで作成できますので、一番手軽に作成できる遺言書と言えます。しかし、従前の自筆証書遺言では、遺言の全文を自筆で書く必要があり、また、誤字の訂正方法などの厳格な方式が定められていましたので、とりわけ高齢者等にとっては相当な労力を伴うことから、利用される方も少なかったのではないかと思います。

そこで、民法の改正に伴い、2019年1月13日から「自筆証書遺言の方式」が緩和されました。遺言書の本文は自筆で書く必要がありますが、これと一体となる「相続財産の目録」は自筆でなくてもパソコン等で作成したもので良いとされました(ただし、目録の各ページに署名・押印は必要です)。更に、相続財産目録を作成する代わりに、登記簿謄本や預金通帳の写しに遺言者が署名・押印したものを添付する方法で作成することも可能となりました。

2.遺言書保管法による自筆証書遺言保管制度ができました。

2020年7月10日から、自筆証書遺言の作成者は、法務省令の定める様式に従って作成した自筆証書遺言(封をしていないもの)を、法務局において保管してもらうことを申請することができるようになりました。

自筆証書遺言は「他人の力を借りず」「特別な費用もかからず」に「どこでも」「いつでも」作成できることから、遺言者にとって手軽で利用しやすい制度である一方で、遺言書の作成や保管に際して第三者が関与しないので、遺言者の死亡後に「遺言書の真正や遺言内容をめぐる紛争」が生じるリスクや「遺言書の紛失・隠匿・改ざん」のリスクがありました。しかし、今後は、遺言書保管法によって創設された「法務局における遺言書の保管制度」を利用すれば、自筆証書遺言の手軽さを損なうことなく、上記のリスクを軽減することが期待できます。

遺言書の保管申請は、自筆証書遺言の「遺言者本人」が同人の住所地・本籍地または所有不動産の所在地を管轄する法務局内の「遺言書保管所」に申請して行います。法務局(遺言保管所)における遺言書の保管に際しては「遺言書保管官」が遺言書の形式(日付及び遺言者の氏名の記載、押印の有無、本文部分が手書きで書かれているか否かなど)を確認しますので、作成された遺言書は封をせずに持参されてください。

なお、遺言書の作成に限らず、相続のことでお困りのときは、弁護士会の法律相談センターでご相談ください。