弁護士コラム

相続に関する基礎知識

今回は、相続に関する基礎知識についてです。

 私の祖父が急に他界しました。親族としては、祖母の他、叔父夫婦、叔母、私の母は亡くなっているので、孫の私と私の父がいます。叔父は、祖父の姓を継ぐよう祖父から頼まれ、若い頃、養子になったそうです。祖父名義の財産として、自宅不動産、預金、生命保険金などがあるようですが、祖父は生前、事業をしており、借金がまだ残っているようです。私は、祖父の相続手続を進めたいのですが、借金の存在も気になります。どうすれば良いのでしょうか?

まず、祖父の遺言があれば、相続は遺言に従って行われることになりますので、遺言書の有無を確かめる必要があります。代表的な遺言の種類としては、被相続人自ら記載して作成した「自筆証書遺言」(民法968条)の他、公証役場で作成した「公正証書遺言」(民法969条)があります。なお、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で、相続人の立会いのもと裁判官に遺言書を開封してもらう「検認手続」を経る必要があります(民法1004条)。

遺言がない場合、相続は法律の定めに従うことになります。ご質問の例では、相続人は、「祖母、叔父、叔母、孫の私」になります。孫が亡母を飛び越して相続することを「代襲相続」と言います。なお、亡母の夫(孫である私の父)は、祖父と血縁関係にはないので、相続人ではありません。
法定相続分は、祖母が2分の1、残りの2分の1を3人で分けますので、叔父、叔母、私が6分の1ずつになります。勿論、それに縛られず、相続人全員で遺産分割協議をして、法定相続分とは異なる分割をしても構いません。
なお、叔父は養子ですが、相続分は実子と同じです。ちなみに養子になっても、実親との親子関係は消滅しません。従って、叔父は、叔父の実親が亡くなった場合にも、実親を相続することになります。

相続人が確定したら、相続する財産の範囲を確定しなければなりません。
ご質問では、預金などプラス財産もありますが、借金というマイナス財産もあるようです。相続したくないという場合には、「相続放棄」をすることも可能です。但し、相続放棄は、自己のために相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申立てなければなりません(民法915条、938条)。なお、相続放棄前に相続財産の一部でも処分してしまうと、相続を「単純承認」したものとして相続放棄ができなくなりますので、ご注意ください(民法921条)。
また、借金がどの程度なのか、調査するのに3ヶ月では足りそうにない場合には、家庭裁判所に対して相続放棄の期間の延長を申し立てることもできます。
相続財産が、プラス財産とマイナス財産のどちらが多いのか分からない場合、プラス財産の限度でマイナス財産を返済し、財産が残ったら相続する「限定承認」の制度もあります(民法922条)。但し、相続人全員でしなければならず、手続が複雑なので、あまり利用されていないのが現状です。
何もせず3ヶ月が経過してしまいますと、「単純承認」とみなされ、プラス財産、マイナス財産の全てを相続することになります。

ご質問では、生命保険金もあげられていました。生命保険金は、受取人固有の財産ですので、相続財産としては取り扱われません。ご質問で、仮に生命保険金の受取人が祖母に指定されていた場合には、祖母の固有財産となります。

相続に関する一例をあげましたが、他にも様々な問題があります。弁護士に相談してみたいけど、こんなこと聞いても大丈夫かな、と思われた場合でも、弁護士会の法律相談では、担当弁護士がきちんと回答いたします。
相続問題に限らず、ちょっとしたことでも、お気軽にご相談ください。