弁護士コラム

司法修習生に対する給付金制度が復活しました

司法修習とは

司法修習は、司法試験合格後、法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)として必要な能力・素養を身につけることを目的に実施される研修期間で、司法修習を経て初めて法曹になることができます。司法修習を受けた者が弁護士・裁判官・検察官となり、その後国民の権利を擁護し、我が国の司法制度を支えています。公益的な観点からも、司法修習は重要な役割を果たす制度といえます。

給費制度の廃止

現在の司法修習は、約1年間実施されます。その間、司法修習生は、修習に専念しなければならず、原則として兼業は許されません。そのため、平成23年以前は修習に専念させるために司法修習生には国から給与が支払われていました(給費制度)。しかし、平成23年11月から給費制度が廃止され、生活資金を貸与する「貸与制」に変わりました(貸与なので返済する必要があります)。

司法修習生の経済的負担

先ほど述べたとおり、司法修習生は原則として兼業は許されませんので、司法修習中の生活費を賄うため、多くの者が国からの貸与金を受けて生活している状況でした。
しかし、このような経済的負担があることで、有為な人材が集まりにくくなると言われてきました。実際、近年は法曹希望者が減少の一途を辿っており、抜本的な対策が求められる状況でした。
司法制度は、国民の権利を実現するために不可欠な社会的インフラです。その弱体化を防ぐためにも、司法修習生への経済的支援が求められていました。

給費制度の復活

そのような中、平成29年4月19日、司法修習生に対して「修習給付金」を支給する旨を定めた改正裁判所法が成立しました。同年11月1日に施行予定ですので、今年司法試験に合格した司法修習生から支給開始となります。

改正法の成立と残された課題

司法修習生への経済的支援について、多くの市民の皆様や各政党の国会議員の方々に賛同及び協力をいただき、司法修習生に対し給付金を支給する「修習給付金」制度の創設に至りました。
他方、残された課題もあります。
第1は、「修習給付金」の金額が、経済的不安なく司法修習を行うための費用としては必ずしも十分ではないことです。給付金額については、司法修習の趣旨及び今後の司法修習の実態もふまえた検討が必要です。
第2に、貸与制度を利用し貸与を受けた司法修習生(平成23年11月~平成29年10月間の司法修習生)には、何らの経済的支援もなされておらず、著しい不公平が生じていることです(この間の修習生は今後も貸与金について返済義務があります)。このような不公平を解消するための措置も必要です。
以上のとおり、修習給付金制度ができたことは大きな前進ですが、残された課題もあります。当部会はこれからも修習生の育成のための制度整備実現に取り組んでいきます。