弁護士コラム

養育費と面会交流のお話

子どものいる夫婦が離婚する場合,避けて通ることができないのが,「養育費」と「面会交流」のことです。夫婦が離婚をしても,子どもの父親と母親であることは一生変わらないからです。
今回のコラムでは,養育費と面会交流について簡単に説明をします。

【養育費】

養育費は,親の子どもに対する扶養義務(生活保持義務:自分の生活と同程度の生活を子どもにも保持させる義務)に基づくものであると言われています。簡単に言うと,義務者(子どもを育てない親)は,権利者(子どもを育てる親)の所で暮らす子どもが,最低でも自分の所で暮らすのと同程度の生活を送れるように,養育費を支払う必要があるということです。

この点,現在の家庭裁判所などでの実務では,「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表」(以下「算定表」といいます)を利用して,簡易・迅速に養育費の額を算定しています。この算定表は,市販本やインターネットでも入手することもできますが,権利者の側からすれば「子どもを育てるのに十分な金額とはいえない」という感想も聞かれるところです。

また,離婚時の話し合いで養育費が定められていても,実際には「支払いがない」ということも度々聞く話です。もっとも,養育費の金額や支払方法について,きちんと調停調書(家庭裁判所で作成)や公正証書(公証人役場で作成)の形で合意していれば,養育費の支払いがない場合にも、義務者の預貯金や給料などを差押える手続きを行うことで養育費を取立てることができます。
そこで,養育費については,単なる口約束や念書などではなく,家庭裁判所や公証人役場を利用して調停調書や公正証書を作成しておいた方が安心です。

【面会交流】

面会交流は,父親と母親の離婚後も親子間の交流を維持していくことが子どもの健全な成長に貢献するとの考えから,普段は子どもと一緒に暮らしていない親が定期的に子どもと面会等することをいいます。このように,面会交流は,子どもの健全な成長のために行うものであり,父親や母親のためものではありません。したがって,夫婦ではなくなってしまっても,父親や母親として,子どものために相互に協力し合いながら面会交流を実施することが望ましいといえます。

もちろん,面会交流を実施することが逆に子どもの健全な成長に反するような場合(例えば,子どもを虐待するおそれがある場合など)には,面会交流は実施されるべきではありません。
しかし,そのような事情が全くないにも関わらず,子どもと離れて暮らす親が子どもとの面会を拒絶される場合には,家庭裁判所に子どもとの面会等を求める調停を申立てることができます。調停における話し合いがまとまらない場合でも,裁判官が一切の事情を考慮して判断(審判)をしてくれます。

なお,調停や審判で子どもとの面会交流が定められたのに相手方が面会等に応じない場合には,子どもとの面会等を直接的な強制方法により実現することはできませんが(勝手に子どもを連れて行くと未成年者略取として罪を問われることもあります),面会交流を拒否する相手方に対して,家庭裁判所を通じて子どもと面会等をさせるように求めてもらい,従わない場合には一定額の金銭を支払わせるという間接的な強制方法を取ることができます。