弁護士コラム

先物取引について

1.先物取引とは

先物取引とは,ある商品について「将来の一定の時期」に「一定の価格」で売買することを「あらかじめ約束」する取引のことをいいます。

先物取引には商品先物取引(金・原油・大豆など)と金融先物取引(国債・株価指数・為替など)がありますが,対象となる商品や金融商品の価格は様々な要因によって変動することから,予期しない高額な損失を被ることがあります。また,取引業者にあらかじめ預託している資金(委託保証金)の何倍もの商品価格の取引が可能なため,商品価格の変動結果によっては,①取引を終了させる場合に,取引業者に預託していた資金を失うことになるだけでなく,価格の変動差額の不足分を追加で支払わなければならなくなることもありますし,②取引を継続する場合にも,取引業者から追加資金の預託を迫られること(委託証拠金の追加預託,いわゆる「追証」が発生すること)があります。

このように先物取引はハイリスクな取引であることから,取引の勧誘に際しても,次のとおり,法律で厳しく規制されています。

2.先物取引に関する主な規制

先物取引については,消費者保護の観点から,様々なルール(法的な規制)が設けられており,取引業者が取引の勧誘に際して以下のような行為を行うことは,商品先物取引法や金融商品取引法などによって,禁止されています。

  1. 顧客(消費者)が「契約しない」とか「勧誘を希望しない」などの意思を伝えているのに勧誘を継続すること
  2. 顧客に対して「必ず儲かります」とか「相場価格が下落しても現物を手元に残しておけば価格相場は回復しますから安心ですよ」などと述べるなど,「不確実な事項について断定的な判断」を提供したり,「確実であると誤認させるおそれのあること」を告げて勧誘すること
  3. 嘘や事実とは異なることを告げて勧誘すること
  4. 顧客に迷惑や困惑を感じさせるような方法で勧誘すること

3.先物取引を勧誘された場合の心構え

(1) 取引に興味がない場合

先物取引に興味や関心がない場合には「きっぱり」と断りましょう。断っているのに執拗に勧誘を続ける取引業者は,法律に違反しているだけでなく,悪徳な業者である可能性もあります。

(2) 正規の取引業者かの確認

正規の取引業者は法律に基づいて許可または登録を受けていますので,先ず,その取引業者が許可等を受けているかを確認しましょう。正規の取引業者かどうかは,消費者庁経済産業省のホームページなどでも確認できます。

(3) 投資資力に関する正確な情報の提供

先物取引の勧誘を受ける場合には,過剰な投資の勧誘や資力を超えた取引に至らないように,取引の資力に関する情報(収入・資産の状況など)は正確に伝えましょう(もちろん,取引を行うつもりがない場合には,年収などを答える必要はありません)。

(4) 取引リスクの確認

先物取引は、上記のとおりハイリスクな取引ですので、取引業者に取引におけるリスクをきちんと確認しましょう。甘いことばかりを囁く取引業者は、あなたの資産を狙っている悪徳業者かもしれません。

(5) 悪質な取引業者への対処

悪質な取引業者による迷惑勧誘や悪徳行為などにお困りのときは,消費者庁などの先物取引監督機関や最寄りの消費生活センターにご相談されるか,弁護士会の法律相談をご利用ください。